身体を揺り動かされ、まぶたを開けると、まず目に飛び込んで来たのは、壁に掛けられた時計だった。

深夜1時。

この間は早朝6時だった。不規則にも程がある。

だがまあ、仕事が無いよりマシというものだ。

俺はノロノロと準備をし、そしていつものように走り始めた。



こいつと走るようになって、2週間が過ぎていた。

初めて顔を合わせた時、奴は怠惰の極みだった。

こんなタルミきった奴に、俺の相棒が勤まる筈もないと思った。

だが、あいつは、毎日確実に責務を果たしていった。

既に、あいつの身体は変わりつつある。

このまま順調に行けば、奴が生まれ変わるのも時間の問題だと思えた。


だが、運命は気紛れだ。あまりの順調さを嫌うかのように、奴はぱたりと東京から姿を消した。


あれから2ヵ月。何の音沙汰もないが、奴は帰って来ると、俺は信じている。

俺のペダルが錆び付かないうちに、必ず奴は帰って来る。

そして、何食わぬ顔でサドルにまたがり、消費カロリーを気にかけながら、ペダルをこぐだろう。

その時は、俺も久し振りだなどと言うつもりはない。黙って経過時間を表示してやれば良いのだ。

漢の会話に、言葉は要らない。

俺達が目指す場所は、たった一つなのだから。